「ひとびとが憧れる街」

 DENSANという名前で、新ブチック開店の案内状を頂いた。
パリの日本人街の中で、以前は可なり広いデザイナーブランドの本店があった後である。一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会の略称で、「伝産」なのであった。日本各地で伝わる100年以上の歴史のある、優れた工芸品の産地のあつまり、1975年に通産省の肝いりで誕生した天下り組織、東京青山に本部があって、見ていたら岡山の備前焼会館も入っている。初回は漆、鉄瓶、など6品目でオープンであったが、現在全国の222品目加盟しているそうで、その内に備前焼の紹介される番も回って来るだろう。東京から専務理事酒井正明氏が飛んできて、挨拶と樽割りでオープニング、店の名前は「和」という。
 恒例のサロンドートンヌ展、FIAC(前衛美術専門画商展)、その他にルイヴュトンの財力でその財団美術館で開かれた、ロシアから運んできた127点の旧シチュウキンコレクション展、10月は美術の展覧会の話題が多い月であったが、パリの11月は写真月間である。アカデミーフランセーズや芸術院が入るフランス学士院の、壮大、華麗な建物の中で写真芸術の講演会が開かれて、今年度の授賞カメラマンが発表された。18世紀以来のフランスを代表する著名知識人、学士院会員の肖像の油彩画、彫刻が、壁面狭しと並んで見下ろす大会議ホール、入って見学できるチャンスに行かない手はない。フランス語は充分ついて行けなくても、名前と顔で時間が過ぎて、学士院はルーブル美術館の対岸に大きくそびえている。アカデミー写真賞は設立されて10年目、昨年度の授賞者は日本の「芭蕉の道」をテーマに撮った黒白写真シリーズで、15、000ユーロの賞金が出され、今月学士院別館ホールで展示されている。
19世紀に写真技術を発明した国だから、写真家の芸術院会員も現今では誕生し、この20年来力の入る写真催し行事月に、この月はなってしまった。グランパレの大会場はアメリカから100以上の画廊が写真を持ち込んで展示されるし、ポルトベルサイユパリ市見本市会場最新技術の取引(カメラの製造はまだ日本も)、街なかの画廊、各所一斉に写真の展覧会が溢れている。

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