岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2016年1月10日

「自分の誕生日」

 昨年の冬からズーッと異常である。パリでも日中の気温が10℃を割る日がない。普通なら氷点下になる日があっても驚かないのに、明治の末の頃にこんな冬があって以来の記録らしい。もうアカシア類の街路樹に、木の芽に緑が感じられる。今時は細いジーンズに、短いタイトなジャケットが、パリ風の制服姿である。
 よく何歳ですかと聞かれるが、「天皇と同じ齢です」と答える。先方が10日だけ年上なのだが、満で数えるからあまり変わらない。それでも年月は変わり、先方は酉年だが、こちらは戌年になる。学年は一緒の年度で、先方はクリスマスの前々日だが、こちらは正月の3日目である。誕生日祝いに何かと考えたが、仕事を休んで、丁度知人から知らされていたカルナバレ美術館の「マレー地区・歴史遺産保存の記録」展を見に行くことにした。パリに暮すと、美術館や画廊、展覧会が一杯あって、毎日ある。余程の事でないと見ないようにしないと、振り回され、自分の制作が出来なくなってしまうから、行かないのが一番となるが、この展覧会にはアカギの素描原画が2点出ていたよと、何人かの行った人から聞かされ、気になっていたのである。パリ市立のパリの歴史に関する美術品を収蔵する大きな美術館で、専門的な企画展を開く。常設展の方は市負担で入場無料、日曜日の大混雑でこんなに人が来るのかと驚く位だったが、入場料のいる特別展の方は空いている。1000円一寸相当のチケットを買って入る。

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