岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2015年10月11日

「3年ぶりの日本個展」

 日本に暮すと、グルメニュースばかりにTVは埋まって、平和なものだが、パリに戻るとシリアとかアフリカ、戦闘機が飛び交い、避難民のニュース、さらに大自然の異常災害、平和に暮らせているのが不思議で、もう第3次世界大戦が、入り口手前のような気分になって、それに失業と労組デモが加わる。人手を省略する機械を発明するのが科学文明の進歩で、効率の良さを求めるのだから要らなくなるのが当然、それで失業が増えるのはまことに当り前の結果で、発想をかえて人手を沢山必要とする機会や、機械を考える方が、世の中のためかも知れない。代議士や公務員の数、職場が激増して、国の財政赤字をこれ以上増やすのは、まことに困ったことになるから用心だが。
 日本で3年ぶりの個展だったが、われわれの年齢になると、あの人も、この人もと、赤線で消して住所録の整理に追われることばかりで、3年は大きい。15分おきに発着する民営JR、新幹線の威力は強力で、京都での個展なのに、思いもかけない人たちが、噂を聞いてつぎつぎ東京から訪ねてくださる。またすぐ東京に帰りますと一様に何気なく言われるから、もう隣の町のようである。東京の人にとって京都は、何かの機会に東海道53次以来行って見たい手近な憧れの町かもしれないが、夜汽車に一晩ゆられて上京なんて暮らしていた、つい半世紀前の人間には夢のように思えたことであった。

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