「とにかく猛暑」

 パリ市立服装史美術館(ガリエラ美術館)に行く。3月から8月下旬まで、ジャンヌ・ランバン(1867~1946、オートクチュール店1889年開業)の刺繍服回顧展が開かれている。スワロフスキークリスタルがスポンサーである。毎週木曜日は夜9時まで開いている。地味な展覧会のようでいて、仕事の帰りだろうか意外と沢山のパリジェンヌが訪れている。その日も900人を少し越す入場者でしたと、館の職員が答える。高級な材料、いろいろなアイディア、緻密な手間の掛かった仕事に、こんな衣服がデザインされ、着る人があったのかと引き込まれてしまい、人々が懐かしく訪れるのだろう。心のこもった良い仕事は、いつまでも生きている。
 今週はちょうどパリ・オートクチュールのコレクション発表週間であった。東京銀座にあるテーラード壱番館の創立者次男の、渡辺弘二氏が、東京に婦人オートクチュールサロンを開いて創業40年、記念してパリの国立装飾美術館を借りてコレクションを一日開く。現在は美術館も維持に収入を要求されるから、休館日などに会場を貸すこともする。この日も同館内で3カ所、さまざまの催しだった。昔学んだパリで、始めてのショーだそうで、本人の夢の実現お目出度い。在仏の日本人が多かったが300人ばかり、デザインについては1回では何とも言えないが、東京にもこのような高級オーダー服の技術が移植され、育っているのだと興味深かった。丹念な仕立て技術、良い材質、何ら遜色のない現代である。

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