「二つの繊維アート展」

 浮世絵が19世紀、20世紀は劇画マンガ、日本からの発信が世界の美術に影響を与えたものとして、定番のように引用されるが、新素材繊維の開発や加工も、日本からの発信が世界の注目の的である。何かまた新しい素材や技術が生まれているのではなかろうかと、技術国日本には、ファッション業界だけではなく、デザイン、インテリア、日本への関心が深く注目される。三宅一生、ユニクロなどの成功も表れの一端だが、化繊会社の技術開発だけでなく、日本にテキスタイルデザイナーたちの集団が育っているのが、定評なのである。パリ日本文化会館で5月から7月11日まで開かれている「未来の繊維展」、繊維、紐状の素材を使ったアート展も、入館して観ると、一つ一つがとても見応えのある立派な展覧会である。2011年ニューヨーク展を皮切りに世界の8カ所を回り、各所で評判と話題になり、9カ所目がパリで、来年オランダの美術館で終わる。30名の作家、殆どが女性作家なのだが、日本からの発信も各人各様、いずれもが重ならないそれぞれに、こんな手法もあったかと驚かされる独自の開発が分かる。近年、中近東、ヨーロッパの伝統のタピッスリー展でも、技法からはみ出した立体的な作品も目立つが、始まったばかりのこの「繊維アート」展覧会は、パリでも大変な刺激となり、関心の若者が押しかけそうである。

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