「200年つづいたフランスの老舗」

 それが近年の料理ブームの広がりで、1995年からパリにブチックを開き、2002年からはレピュブリック広場に近いタンプル市場の界隈に移転した。地上2階地下1階、150平方のあまり大きくない店だが、真物の純正香辛料食品をあつかう専門ブチックを開き、料理通や料理学校の生徒などに好まれそうな、通常の店では手に入らないようなものまで品ぞろえされている。胡椒だけでもたいへんな種類と産地別だし、料理用オイル、穀類、まことに細かく専門分類されているものだと、ラベルを読むだけであきない。料理、パティシエーのコンクールなどに応じるとなると、やはりこんな店で特殊材料を手に入れなければならないのだろう。問屋さんだから、通常はオーダーと発送で済んでいるのだが、ブランド名の知名度も商品の時代、一般向けブチックも開いたのだそうである。200年つづく秘訣はと訊ねたら「ア・ラ・ジャポネ」(日本流で)と返ってきた。つまり長子相続制度の家憲で、遺産相続だとか、権利だ、分割だとかやっていては、家族割れ、投資家、弁護士などの餌食で、専門の一流老舗は育たないということだろう。ロスチャイルド銀行などでも、長子相続がはっきり守られていて、100年会、200年会、ヨーロッパには長く続いている家族企業の集まりの会やクラブもある。とてもマスコミや外国人などにはのぞけない社会だが、きっちり伝統がまもられている。

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