「鏡」

 7月に入ると、もうバカンスシーズンで、パリはグッと空いて、各種の道路、地下鉄各種の補修工事がはじまる。多くの人は夏休みに田舎のセカンドハウスに9月末まで過ごす。ドッと出掛け、代わってパリに入ってくる旅行のツーリスト集団が、これまた溢れているが、1区、2区、8区、6区の周辺と限られて、その辺りだけ混雑、ゾロゾロ歩いて、二日間位の滞在では終わってしまう。
 200年くらい前から開かれた、アーケード商店街で内部を描いている。昔は流行っていたのだが、つい最近まで古臭くて見捨てられていた。それが近年見直されて、ツーリスト団体の押し掛けるところとなっている。オペラ座の周りの地区に、集まって何本もアーケード商店通りが沢山ある。ノスタルジーを起こさせる古臭い店構え、忘れられたような商売が珍しさで人を呼び、昨今は賑わいに驚く。ランプやガラス天井からの弱い採光のため、光の効果を増すように、ベルサイユ宮殿の鏡の間が有名だが、19世紀発生のアーケードも、鏡が各所にはめ込まれ利用されている。大きな全身鏡の反対側で仕事をしているが、見ているとフランス人は、男女、子供でもこの鏡の前に立ちどまって、自分の全身を眺め、身なりを注意して、ヘアーなども直して行く。東洋人、アフリカ系、イスラム系、まずやらないし、ただゾロゾロ無関心に、鏡は見ないで過ぎて行く。

2014年7月11日 赤木 曠児郎

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