「老人よ、何故怒らない?」

 記憶では、以前に渡辺守章さんが「天守物語」(泉鏡花原作)で、この会館で現代劇の演出上演されたことがあるが、お能、狂言、舞踏、舞踊など、現代劇では、あまり人数が要らないで出来る、前衛不条理演劇の系列が多く、日本で商業演劇として成立している作品の上演は、開館以来始めての事と記憶する。さすがと現地側も興奮の渦に湧き、忘れられない催しになった。筋書きの分かったような、分からないような、何時もの前衛劇では無く、公安事件で裁判される若者、そこへ爆弾を持ったお祖母さん初め、老女の大集団が乗り込んで、裁判所を占拠、逆に裁判をはじめて裁判官など全員を裁いてしまう破天荒なストーリー。筋書きがきっちりと追えて、内容の分かる、面白い劇なのであった。フランス語字幕の翻訳も明瞭で、多く集まったフランス人観客にも、現代の日本、日本女性の姿、意見を見せた。主要ポストは男性主体で押さえられ、女性の社会進出の後進国、花嫁、舞妓(日本画でお馴染み)、おとなしい主婦の国と言う、定着している日本のイメージを、一掃してくれるような意義ある上演だったと思う。そういえば現在この文化会館も、3代目は女性館長である。
 日本では女性と言えば、可愛らしさが優先するが、「カワイイ」は、決して誉め言葉ではない。AKBなんて子供の世界で、何故大人が熱狂するのかヨーロッパでは恐らく理解できないだろう。ファンから大攻撃を受けるかも知れないが宝塚も、子供が上手に芸をやる劇団としか受け止められない、大人の女性、女の魅力から縁の遠いものである。今回の上演は衝撃的に、日本女性の存在を示したものなのであった。

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