「朝市にて」

 パリの町々には、定期移動朝市が週に2回づつ、大通りや広場、ガード下とか、場所を決めて開かれる。前日にトラックが来てパリ市の係りがテントを張り、翌朝決められた指定の場所に店屋が入る。午後1時には閉めて、夕方には片付けられて、普通の道路にもどっている。150から200店舗にも及ぶだろうか、専門にあちこちと市内を巡回していて、両側には普通の店舗も並んでいるのだが、朝市の出店に人は集まって来る。露店で狭まった道を、人混みに揉まれてキョロキョロ歩くのが情緒なのだ。パリの朝市、歴史的には紀元1000年頃から辿れるのだから古い存在で、1985年の記録に市内82ヶ所、内14は、固定の鉄骨市場建物を持ち、大きい露店市場は500店近く集まるとある。花園芸市専門、美術品専門の週末に終日出るテント市、定期骨董がらくた市の専門化したものも知られている。朝市だから日常食料品店が集まると思うと大間違いで、近年の特色は半分位が衣料品である。野菜、果物、肉、魚、チーズ、ハム類などの、専門のスタンドの間に、衣類、シャツ、帽子、ストール、靴、アクセサリー、裁縫材料、台所用品、石鹸、電気小物、日曜大工、何でもが、じゃが芋やリンゴの間に全て集まっている。スカート、パンタロン、ブラウス、パジャマ、ブラジャー、ドレスまで、目下大体10ユーロ(日本円1000円)が目安で、投げ売りや安く輸入された物が溢れている。パリジャンの日常着の姿を見ていると、なるほど吊るされているあれが流行りで今着ているのかと、納得することが多い。店舗を構えている店の品物は、少し割高なので、みんな年2回の特売セールのチャンスを待っている。
 

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