グレ・シュール・ロアンの黒田清輝通り(1)-白
リュクサンブルグ公園のライオン像
 

「近頃のこと」

 パリの日本文化会館では、開館10周年記念行事で、昨年から1月末まで「黒田清輝から藤田嗣治まで」、55点の作品で日本の西洋画導入120年の歴史展を開いていたが、最終日の前日に、同館で日仏記者会により、昨年暮れ藤田嗣治の3冊目の伝記資料集を出版したシルビー・ビュイッソンさんを招いて、記者会見セミナーを開いた。ヨーロッパで始めてのフジタ専門研究者であるが、今から20年前に出版した600ページにおよぶ、世界で始めての藤田のカタログレゾネは、作品著作権所有者の藤田未亡人の申し立てにより、日本には税関で輸入禁止、フランスでは7年の裁判の末に勝訴、出版は認められたという、話題の多い研究者。2冊目の続編は、藤田未亡人から訴えられなかったので、自由に流通しているという。
 今回の3冊目は日本の日動画廊の協力で、日本にあった新資料が使えたので、3分の2は、未発表の資料図版、英仏日3ヶ国語で書き起こし、普及版で手ごろな値段にした、400ページの力作である。特にフジタ作品については、贋作も多く、常に真贋判定がつきまとうが、日本市場では5社の美術商が組んで、藤田委員会が出来ていて、ここの鑑定書が全てを決定する仕組みになっていて、藤田が日本画の技術や感覚で仕事していたと、決め付けて鑑定がなされる。しかし、藤田は西洋の新しい物、過去の美術の伝統、技法も取り入れていて、影響にも敏感であった人で、生活も、身にまとうものも、人と同じものはしたくなかったのを、生前の写真資料から考察。
 作品についても、由来のはっきりした、間違いのないものですが、西洋画の技法が取り入れられていると、日本の鑑定委員会では、多分に贋作と判定されますと、数々の色々な実例をあげて、ジャーナリストの期待に答えてくれた。質疑応答も入れて1時間くらいの予定が、2時間半、質問も時間切れという、近年珍しい熱の入った記者会見で、印象に残った。

2008年2月6日 赤木 曠児郎  
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