岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。
163フォーブル・サントノーレ

【近況】

朝・午前中はアトリエで制作。午後・日没までは外で素描原画の制作。当分これが日課です。
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≪既刊≫

『パリ画集・21世紀始まりのころのパリ』
マリア書房刊
ISBN4-89511-347-7
6,500円+税
この8年くらいかけて描いた、約100点の最新作素描原画を収めています。

「新書版・私のファッション屋時代」

900円+送料
講談社エディトリアル・株式会社第一出版センター(担当・大崎さん)
TEL(03)5319-4150
FAX(03)3944-5241
または、展覧会場でのみ発売
 
2007年3月5日

「赤いコート」

 今年の冬はパリも本当に暖冬で、普通なら零度以下に気温が下がって、風に当たるとペン先のインクや、水彩絵画の筆先がチャリチャリと凍って紙に付かなくなるので、幾ら着込んで体を守っても仕事の出来ない日が数日はあったのだが、この冬そんな日が1日あっただけだった。外でデッサンする私には、雨も大敵でインクを水で流してしまうので、また仕事に出掛けられない。この冬は風が強く吹き、晴れていてもザーッと降って、また上がるの連日で困った。出ようか出まいか、精神衛生上たいへんに悪いのである。
 それでも3月に入り、お年寄りの女性が真紅のウールのコートを着て現れる姿を見ると、美しいなとハッとする。若い女性やOLでは駄目なのである。街路樹の枯れ枝が起きて来る春先に、銀白の老齢の女性が着こなす赤いウールがいかにもパリジェンヌらしいのである。枯れ葉の冬の入りにはベージュ系の、いい品質やキャメルやカシミアのコートでなくてはならない。普通のOL、学生、子ども、庶民では殆ど黒、紺、ベージュで濃く、化繊アノラック生地の衣料が全般だから、パリの西半分の高級リッチ地区で、ポツポツと見掛けると、その女性の生活史がうかがえて、春を感じるのである。

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赤木曠児郎氏 略歴
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