パラティーヌ通り
 

「デモの報道」

 そうかといって、社会保障の制度が進むところまで進み、行き過ぎるくらい守られているように見えるフランスと日本とを、同じに考えてはいけないのである。一年でも早く定年の権利を得て、年金を貰ってのんびり気儘に暮らしたいと考えるフランスと(そのためには資金がいるから消費税は20%だし、あらゆるものに特別税が設けられて、国民総生産の半分は国に吸い上げられる)、老後の心配で少しでも永く働きたく、天下りまでしてガツガツ稼ぎたい国と、同じ条件ではないのは誰でも分かる道理で、新卒の学生も学歴と免状レベルによって、適性職としてすぐ管理職につくのである。全員新入社員で鍛えられ、昇進してゆく日本と同じに考えることは出来ない。そして雇えば労働法で保障されて解雇出来ず、これでは危なくて、雇用者に負担の高い社会保障分担金を払ってまで、うっかり人は雇えない。社会全体が高学歴になり、免状相応の職を要求しても、皆の満足する数だけの職場があるわけはないのである。
 移民労働者層の増加や失業が問題になっていても、3K職の需要のためには年間五万人の移民労働者の移入が必要だと、大臣が言うのだから驚いてしまうだろう。アフリカなどの国から、EU諸国に正規に入ることに成功すれば、いろいろな社会保障の手当てで、遊んでいて本国の20倍、30倍の所得が得られることになるのだから、夢の国を求めて入り込もうとする人たちの群れは後を絶たない。親は移民で苦労しても、フランスで生まれた子供はフランス人。名目上は平等で守られるが、そこはまた結構人種、社会層の差別が強いので、この層が不満をもらしたのが、昨年暮であった。

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