オー・プランタン百貨店
 

「もうすぐ新年」

 買り取り仕入れで、返品の認められないのが普通の商習慣で、消費税は19.6%で、ザッと二割。物品、飲食、サービス業、運賃、すべてに日本なら革命の起きそうな数字が当たり前の、社会保障制度の行き届いたこの国では、年に計六週間を、二回に分けて、期限を区切って仕入れ商品一斉整理の特売が認められているのである。
 商品は少なくとも三ヶ月は正価で店頭に並んだものでなくてはならないし、幾らの価格の物を、幾らに下げますと併記が義務。セールの期日が終わると、またキチンと元の正価に戻される、などと決まりも多い。年中価格ダウンのセールをされては、高率消費税が成立しなくなってしまうから、必要な対策措置だろうと思う。不正販売行為があると、消費者運動などから投書があったり、取締りのニュースには事欠かない。
 四割引、宝飾品など五割引も珍しくない。だからお客もこの開始日を待っているので、意外とガランとしているのである。
 エルメス、ルイ・ビュトンの店などは、外国からも情報を待ち構えていて来るから、販売場に入るために長蛇の列ができるし、有名男子靴店など男性の行列も珍しくない。
 早く行かないと、サイズが無くなるからで、買い物の必要のある人は皆ウインドウの正札を、目を皿にして、毎日構えて睨んでいるシーズンである。数日で安く買えるのが分かっているのだから、わざわざ高く出して買う人はいない。この期を狙って、ヨーロッパに旅行してくる人もあるが、日本から格安の飛行機切符を買って、朝着いて一日中買い物、夜の飛行便でもう帰る、ホテル代不要、と離れ業の人の話も聞かされる。

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