奈義山の黒ボクで土寄せして作られた 在来種の白ネギ
(2005.12.3)
みなさんはネギと聞いてぱっとイメージされるのはどんなネギでしょうか?
土壌の関係で関東では白ネギ、関西では青ネギと昔から言われていますが、北九州市で育った私も、ネギ=青ネギ(小ネギ)を連想します。
しかし、季節にもよりますよね。 今の時期ネギといえばやはりお鍋には欠かせない白ネギです。
今回は岡山県北・勝田郡奈義町を訪ね、火山灰の黒ボクで作られた白ネギを無謀にも生でかじってきました(涙^^;)


土寄せして作られる白ネギ
日本で作られているネギは、白ネギ(長ネギ・根深ネギ)の加賀群(石川)と千住群(東京)、青ネギ(小ネギ・細ネギ)の九条群(京都)に分けられます。
加賀群と千住群は白い葉鞘を食べるので、その部分を日光に当てないよう土を寄せて作られます。 始めは平らなところを掘っていき、その土を両サイドから盛って白い部分が30cmは出来るように仕立てていきます。
機械でするとはいえ、この作業が大変で、白い部分を長くとろうと思ったらより高く土寄せをしないといけません。

今、歩道になっていることろの土を両サイドに寄せて50cm近い高さを作ります。

一枚皮をむけば雪そのものの白さ。
1本150gはありそうな、ずしっとした手ごたえの硬さと、30cm以上の軟白部分
九条群は緑の葉を食べるため土寄せはせず、しっかり日光を当てて作られます。
他にも白・青の両方の部分を食べる越津ネギ(愛知)や、殿様ネギの異名をとる太さの下仁田ネギ(群馬・加賀群)などがあります。

近所の青ネギの畑。
こちらは土寄せの必要がありません。


ネギは鍋!鍋は日本!!日本はネギ!!!
ところでネギは英語でなんというかご存知ですか? 同じユリ科ネギ属の玉ねぎの仲間なので、なんとかオニオンといいますが…
答えは"welsh onion"。イギリスのウェールズ地方のウェールズです。
欧米ではネギよりも寒さに強いリーキをよく食べるため、通常ネギは見られません。 ただ暖流の影響で越冬できるウェールズ地方の栽培が比較的多かったので、その名前がついたのではということです。
ネギは中国南西部が原産で、日本では奈良時代から栽培されていました。
土寄せして長い軟白部分を収穫する白ネギの栽培は日本と中国だけで、特に日本の特殊な栽培方法だそうです。 考えてみると野菜たっぷりの鍋料理は日本独特の食文化で欠かせない食材だからでしょうね。
ちなみにヨーロッパでネギのかわりに食べられているリーキの、太くて、刺激臭が少なく、似ると甘みが強くなる特徴は下仁田ネギにそっくりです。
このリーキ、先週の矢掛町のチャレンジ21のみなさんが作っていて、いただきましたのでオリジナルレシピを考えてみました。 一口メモ(No.29)をごらん下さいね。
ちなみにローマ皇帝ネロはこのリーキを美声の薬として用いていたとか…。もっと食べなきゃ!

下仁田ネギ(左)とリーキ(右)。
若干リーキのほうが太く、軟白部分が短い。
似ているようですが…

葉がまったく違います
下仁田は袋状になっていますが、リーキは平らで硬く食べられません

この二つをガスコンロで焦げ目がつくまでしっかり焼いてみた結果…
下仁田ネギ(上)からは水分がジュワジュワ出てきてしなっとなり、甘みが強くなるのに対し、リーキ(下)は水分が出ない! 焼いただけでは美味しくはありませんでした。
やはり西洋ネギはスープなどに使う方が良さそうです。

焼きネギのこげを一皮むいて梅肉でいただきます!

白ネギの緑の部分も良く洗い、スープのダシに利用しましょう。
中のねばねばを包丁でこそげ落とし、キッチンバサミで細かく切って薬味に。


種のお話 固定種・在来種を守ろう!
奈義の白ネギの品種は、関東越谷の黒一本太ネギです。 火山灰の黒ボクによく合い、奈義山から吹く広戸風にも耐え、とても品質の良い白ネギです。
これを稲の転作として、生産者110人で年間150トン出荷しています。
そして出荷が終わった12月に種を落とし(自家採取)、3月上旬、この種の半分を奈義で苗をつくり畑に移植、残りの半分は鳥取県の苗会社に作ってもらったものを移植します。

今年稲を植えていた黒ボクの土壌。
来年はここにネギを植えます。
「それが珍しいの?」と思われるかもしれませんが、今、野菜の種はほとんどがF1品種(一代交配)といって、種苗会社が、親の良いところと良いところを掛け合わせて優秀な品種を作り上げています。 このため、2世はなかなか育たない(育たないようにしてある)のです。
なぜなら品種改良には多額の費用と時間を費やすため、新品種を育成したものを守る、という種苗法があるからです。 つまり来年もまた種や苗を買わないといけないのです。(種子ビジネスはいろんな要素を持っています…)
しかし、この奈義の白ネギのように、自家採取して育てられ、ある種の特性を固定された固定種や、昔からそれぞれの土地の地形や風土により固定されてきた在来種などの野菜も細々とですが頑張っています。
ネギは、ほとんど日本でのみ消費されているので、固定種・在来種が多い品目のようです。 その証拠にホームセンターに行って野菜の種の裏を見てください。 ほとんどの原産地が海外の中、かろうじてネギのみ日本国内になっていることろが多いのです。 (大根をはじめ、小松菜、人参、トマト… そのほとんどの種が海外からの輸入品。 京野菜の聖護院大根ですらデンマークでした!!)
では、種と気候風土の関係はどうなのでしょうか?? さつまいもの番田芋を取材したとき、「3年かかってようやく番田の芋になっていく!」と言われていた生産者の声を思い出しました。


今そこにある危機 2度目のセーフガード?
もうひとつ、今回は小難しいお話を。
みなさん、2001年のセーフガードを覚えていらっしゃいますか? セーフガードとは、輸入が急激に拡大して国内産業に大きな損害を与えると国が判断した時、一時的に輸入を制限するため関税を引き上げる措置です。
日本は今から4年前、初めて中国産のネギ、生シイタケ、畳表に期限付きの暫定セーフガードを発動しました。 通常は3〜6%の関税に対して106〜266%も追加関税を取ったのです。
平成9年の輸入量は9,011トン。 その後急速に輸入が増加して平成12年には42,385トンと平成9年の4.7倍に。
このため平成13年4月から200日間のセーフガード暫定措置を発動し、平成13年は30,332トン(前年比72%)と減少したものの、措置の明けた平成14年から再び上昇。 平成15年に45,174トン、平成16年には国内の台風等被害を背景に70,163トンという過去最大の輸入量となった。

中国産のネギの輸入量を見ると、たしかに急激に伸びていますね。 そしてセーフガード発動後に、中国の野菜に残留農薬が見つかり、輸入量は落ち着きを取り戻したかのように見えました。
しかし、去年台風の影響で野菜が壊滅的に被害を受け、それを待っていたかのように、昨年度は過去最高の輸入量となってしまいました。 またしてもセーフガード発動か?という報道も一時期されましたが、なんとか瀬戸際で踏みとどまっているのが現状です。
生産者の中務さんは「一生懸命品位のいいネギをつくらないといけない。今、2倍近い価格差があるが、値段は安くても品質は決していいとは言えないと思う。ネギの白と青の境の首のしまりを見て欲しい」と言われていました。
スーパーで買うときは切り口が新鮮か、緑と白のコントラストがきれいか、ていねいに土寄せされ白の部分が長いか、そして首がふかふかしていなく、しまっているかを見てくださいね。
国産と輸入… 私も値段と品質をもちろん計りにかけますが、最後は「野菜は生き物、遠いところから来ると疲れてしまう。より新鮮なものを食べたい、食べさせたい。」というところに落ち着くのです。あくまでも私的見解です。

この際のコントラストがくっきりしていて、しまりのよいネギが良品の証。


先人に学ぶ!ネギの効用
ネギの古名は臭いが強いもの、という意味で「キ(葱)」と呼ばれていました。 タマネギ、アサツキ、ワケギも「キ」がつきますね。
この臭いの成分は硫化アリルで、ユリ科ネギ属に特有のものです。 もともと、含流アミノ酸類を持っていて、そのままではあまり臭いを感じないのですが、切ることにより細胞を壊して細胞内の酵素アリイナーゼを働かせ、硫化アリルをはじめ、辛味・抗菌・抗カビ作用・ビタミンB1増強作用のある化合物、催涙・殺菌作用のある化合物、抗血栓・抗アレルギー作用のある化合物などに細分化されていくそうです。
白ネギは、ビタミン・ミネラルはあまり期待できませんが、昔から民間療法に用いられていたのには先人の知恵があったからなのでしょうね。
含流アミノ酸が変化して出来るアリシンは、ビタミンB1(糖代謝)と一緒にとることによって吸収しやすいアリチナミンになり、血管を広げて臓器の働きを良くし、血行が良くなります。 冷え性に良いと言われているのはそういうことです。 ただし、アリシンを期待するならネギよりもニンニクのほうが効果的です。
辛味成分は熱を加えることにより消滅するので、お鍋にいれると甘みがでてきますね。
ちなみに青ネギは緑黄色野菜に入るのでカロテンやビタミンCが豊富です。

JA勝英奈義白ネギ部会部会長
中務廸雄さん

奈義では平成になってから水田の転作としてネギが作られるようになりました。
「奈義は黒豚の産地。黒豚の豚汁と奈義のネギは相性ばっちり!」

袋状の葉の中に害虫が入って食い荒らすそうですが、この時期は虫も来なくなり葉も元気。

真上に抜くにはかなりの力が要りました。
何度もうなりながらようやく抜いた私… ごぼうを思い出しました。
はやり1本1本手で抜くので作業は大変です