山室軍平

会場の模様

京都ノートルダム女子大学特任教授
室田 保夫

同志社大学人文科学研究所助教
林 葉子

第5回シンポジウム実施報告

「社会鍋と救済事業
 地の塩となった社会事業家 山室軍平」

公益財団法人山陽放送学術文化財団は6月6日(木)、岡山ゆかりの福祉分野の先駆者の足跡をたどり、その生涯と功績を議論紹介するシリーズ・シンポジウム「慈愛と福祉の先駆者たち」の第5回「社会鍋と救済事業 地の塩となった社会事業家 山室軍平」を開いた。救世軍を率いて日本の福祉の礎を築いた山室軍平をテーマにふたりの研究者が話し合った。

出演者
京都ノートルダム女子大学特任教授 室田 保夫
演題:山室軍平の生涯と思想 -伝道と社会事業-
同志社社大学人文科学研究所助教 林 葉子
演題:山室軍平と廃娼運動 -日英関係史の観点から-

哲多郡則安村(現新見市)の農家に生まれた山室軍平(1872~1940)。14歳のとき上京して印刷工となり、キリスト教に触れて入信する。1895(明治28)年にキリスト教の一教派、救世軍が来日すると、石井十次の薦めもあって入隊。日本人初の司令官となり、伝道と様々な社会事業、更生保護や慰問籠運動、慈善病院や結核療養所、職業紹介や禁酒運動など様々な事業や社会運動を展開して日本の福祉の礎を築いた。特に、社会鍋の募金活動と女性を遊廓から救済する自由廃業運動は社会的に大きな反響を呼んだ。

シンポジウムでは初めに、山室軍平の活動の様子が収められた貴重なフィルムが上映された。この動画は1929年11月エバンゼリン中将が来日した際、救世軍が撮影したもので、エバンゼリン中将とともに活動する山室の様子や支援者でもあった渋沢栄一との面談、さらに記念植樹なども収められており、岡山映像ライブラリーセンターの小松原貢さんが当時の背景を含めて解説した。

そして講演に移り、京都ノートルダム女子大学の室田保夫特任教授は、「地の塩」となり「暗きを照らす光」となって民衆の福祉のために尽力した山室軍平の生涯と思想について解説。山室が貧しいながらも母の愛を受けて育ったことに大きな意味があり「目の前の困った人をどうやって救っていくのかを考え続け、その実現のために挺身した」と語った。
また、同志社大学人文科学研究所の林葉子助教は、山室が遊郭で働く女性たちの救済に尽くした功績を世界的な視点を交えながら紹介。「女性を遊郭から救出するだけでなくその後の生活を助けるための職業訓練を行うなど突出した対応を行った」と高く評価した。